今回は、「ワンルームマンション投資でキャピタルゲイン(売却益)が出た際の、税金がいくらかかるのか?」についてお話ししていきます。
税率は固定ではありません。
物件を売却するのがたった1ヶ月違うだけで支払う税金は大きく変わってきますので、しっかりと理解しておきましょう。
最大の注意点は物件の所有期間
投資用のワンルームマンションを売却する際に、最も注意しなければならないことがあります。
それは「物件の所有期間」です。
個人で物件を所有している場合、所有期間が5年以上か、それとも5年未満かで税率が大きく変わってくるからです。
5年以上を「長期譲渡所得」、5年未満を「短期譲渡所得」と区分されます。
区分 | 所得税(復興所得税含む) | 住民税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
ご覧いただいたように、所有期間が5年以上か5年未満かで、なんとほぼ2倍も違うのです。
これだけの違いがあることを知らずに、ぎりぎり5年未満のタイミングで売却してしまったら悔やしいですよね。
ここまでの話から
「物件を購入してから5年以上経っていれば「長期」になるので、そこだけ押させておけばいいのね」
と思ったかもしれませんが、実はそうではないから注意が必要なのです。
所有期間は物件を売却した年の1月1日で計算される
物件を購入した日から売却した日までに、5年以上なのか5年未満なのかというだけの話なら簡単です。
ですが、所有期間の計算方法は「売却した年の1月1日の時点で、その物件を何年持っているか?」なのです。
例えば、2014年の5月1日にワンルームマンションを購入したとします。
普通に考えると、その日から5年なので、2019年の5月1日になれば「長期」になると思ってしまいます。
ですが先ほどもお話ししたように、所有期間が決定される日にちは2019年5月1日ではありません。
2019年1月1日で決定されているので、まだ4年となってしまうのです。
今回のケースであれば、2020年の1月1日が「長期」になる日ということです。
所有期間を間違えない方法として、ワンルームマンションを購入してからお正月を6回迎えたら「長期譲渡所得」になると覚えておくといいですね。
ワンルームマンションの購入額と売却額が同じなら税金はかからない?
さて、ここまででワンルームマンションの売却にかかる税金は所有期間によって変わること、そして「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」どちらの区分になるかは、売却時の1月1日時点での期間で決まることをお伝えしてきました。
ここからは、実際税金がいくらかかってくるのかについてお話していきましょう。
まず、私がよく受ける質問に
「ワンルームマンションを購入した金額と、売却した金額が同じ場合、税金はかかりますか?」
という質問があります。
値段が変わっていないので、そこに税金はかからないのでは?と思う方は非常に多いです。
確かにそのような感じもしますが、実際はそうではありません。
なぜなら、購入した金額と売却した金額の「差」で決まるわけではないからです。
不動産物件を売却した場合、「譲渡所得」という所得に分類されます。
計算方法は以下の通りです。
「譲渡所得」=「売却代金」-(物件取得費+譲渡費用)
それぞれの言葉を説明していきましょう。
売却代金
まずは「売却代金」についてです。
ここはそのままです。2000万円で売却したのであれば、2000万円となります。
物件所得費
次は「物件取得費」についてです。
ここは物件を購入した金額のことです。なので普通に考えれば、2000万円で購入していれば2000万円となるはずですが、実はそうはなりません。
物件を購入時の金額のままにならない理由は「減価償却」を考慮しなければいけないからです。
建物は購入して年数が経つにつれて減価償却していくと考えられます。
そのため、経過した年数の減価償却分を差し引いた金額を記載しなければならないのです。
(もちろん土地の値上がりなどがあれば、それも考慮する必要があります)
例えばこのワンルームマンションを10年前に購入したとすれば、10年間での建物の減価償却費をひきます。
仮に減価償却費を300万円だとすれば、
2000万円ー300万円=1700万円
となるので、1700万円が「物件取得費」となります。
(土地の値段は変わっていないものとします)
譲渡費用
続いて「譲渡費用」です。
譲渡費用とは、物件を売却する際にかかった諸費用の金額のことです。
例えば仲介会社を利用しての売却であれば、仲介会社に「仲介手数料」を支払うことになるので「譲渡費用」になります。
あるいは、売買契約書に貼る印紙代も「譲渡費用」として計上します。
ただし注意点もあります。
抵当権の抹消費用や、金融機関への一括返済の違約金などは譲渡費用としては認められません。この点は注意するようにしましょう。
実際にかかる税金を計算してみる
では、ここまでのお話を踏まえて実際にかかる税金を計算してみましょう。
条件は上記の例をそのまま使います。
- 10年前に2000万円でワンルームマンションを購入
- 売却も2000万円
- 土地の値段は変わっていない
- 譲渡費用は68.1万円
- 10年間の建物の減価償却費は300万円
※譲渡費用内訳→仲介手数料66.6万円+印紙代1.5万円)
※仲介手数料→(2000万円×3%+6万円)×1.1=66.6万円
これを実際にあてはめてみると
2000万円の売却代金ー(2000万円の購入額ー300万円の減価償却分+66.6万円の譲渡費用)=233.4万円
となります。
譲渡所得がプラスであれば、譲渡益(キャピタルゲイン)となります。
もちろん計算してマイナスにあなる譲渡損(キャピタルロス)というケースもあります。その場合は税金はかかりません。
今回のケースでは、譲渡所得233.4万円に対して先ほどの長期譲渡所得の税金を計算します。
(所有期間が10年なので長期譲渡所得になります)
233.4万円×20.315%=474,152円
これが、実際にかかる税金ということです。
キャピタルゲイン(売却益)にかかる税金のまとめ
ワンルームマンション投資のキャピタルゲイン(売却益)にかかる税金についてお話ししました。
物件を売却する際の注意点は大きく2つです。
- 物件の所有年数
- 物件の減価償却
物件の所有年数については、5年以上か5年未満かによって、税金の額面が約2倍も変わりますので注意が必要です。
物件の減価償却については、「物件を購入した値段より高く売れたら譲渡所得で税金がかかる」という簡単な話ではありません。
購入した値段より低い値段で売却したとしても、減価償却によっては譲渡所得で税金がかかる可能性はあります。
今回計算方法などもお伝えしましたが、実際にワンルームマンションを売却する際は、必ず専門家へ相談するようにしましょうね。ちなみに私も専門家です笑。