「NISAやってる?」「S&P500かオルカン積み立てておけば間違いないよ」
そんな声を聞くことが増えてきました。新NISAの登場によって、これまで投資に興味のなかった層まで市場に参加するようになったのは確かに良いことかもしれません。
しかし最近では、NISA=安心、安全、正解といった“投資の答え”のように語られることも増えており、そこに危うさを感じずにはいられません。
NISA教に気をつけろ!
NISAとは『少額投資非課税制度』と言い、投資利益に対する税金が免除される制度です。
政府は「貯蓄から投資」という旗を振り、NISAを活用して国民に投資を促しています。
しかし、NISAは投資利益に対する免税制度であって、NISA=安全な資産運用というわけではありませんし、まして「必ず儲かる投資先」でもありません。
NISAはあくまで税制面の優遇であって、投資の中身や成果を保証してくれるわけではありません。
S&P500やオルカンでも12年以上低迷した過去がある
「インデックス投資なら放っておくだけで資産は増える」
この言葉も、たしかに半分は事実かもしれません。ですが、これはあくまで超長期的に投資を続けた場合のみです。
たとえばS&P500については、過去10年以上、最高値を更新しなかった期間があります。
期間で言うと、2000年8月から2013年2月。2000年に株を購入した人は、実に12年6ヶ月もの間、マイナス期間が続いていたことになります。
今は株高のタイミングにあるかもしれませんし、未来のことは誰にもわかりません。
過去と同じく、長期のマイナス期間が再び訪れる可能性だって十二分にあるのです。
なぜNISAだけが「正解」のように扱われているのか?
「NISAは非課税だからお得」「NISAで積立していない人は損している」
こういったメッセージが、政府や金融機関、メディアなどを通して広がっています。
ここで疑問に思うべきなのは、なぜ一つの制度がこれほどまでに“唯一解のように語られるのか?という点です。冷静に考えてみれば、NISAはただの制度であり、それ以上でもそれ以下でもないはずです。
政府がNISAを推す本当の理由は、年金制度の限界
NISAを国が強く後押ししている背景には、日本の年金制度がすでに“限界”に近づいているという現実があります。
少子高齢化による財源不足
年金の受給開始年齢の引き上げ
現役世代と高齢世代の6,000万円とも言われる格差
こうした構造的問題を抱え、政府はもはや「老後は国が面倒をみる」とは言えなくなっています。
そこで出てきたのが「自分で資産形成してください」「NISAで非課税になりますよ」というアプローチです。つまり、老後の不安は自己責任で準備してね、という方針の象徴がNISAなのです。
「自己責任」の空気を作るNISAという装置
もちろん、NISAを活用して資産形成をすること自体は悪いことではありません。
問題なのは、NISAが「これで安心」と思わせるような空気感を作り出し、失敗してもすべては自己責任という前提にすり替えられていることです。
政府の本音はこうです:
「将来の年金は足りないけど、それを言っても不安を煽るだけなので、非課税のNISAというアメを与えておこう。失敗しても“あなたが選んだんでしょ”って言えるし。」
それが本当に“国民のため”なのでしょうか?
その上NISAの枠は非常に少なく、大きな資産を形成するには不十分です。NISAで自己責任の空気を作りながら、実際はさほど優遇が大きくないと言う、どっちつかずの制度だともいえます。
NISA信仰にハマらず、投資の原則に立ち返ろう
NISAはあくまで税制優遇の制度です。
そこに投資手法や将来の成果までを重ねて「安心」と思い込むのは、極めて危険です。
投資にはリスクがある
株式市場には暴落もある
未来のリターンは誰にも保証できない
それでもインデックス投資を続けるなら、制度やタイミングに惑わされず、原則に従うことが重要です。
まとめ:制度を使いこなすのは良い、でも“信じすぎ”は危ない
NISAは悪い制度ではありません。
インデックス投資も、きちんと理解した上でやるなら有力な選択肢の一つです。
しかし、「非課税だから」「みんなやってるから」「政府が推してるから」といった理由で思考停止してはいけません。
制度と投資手段を正しく分けて考え、政府の“責任転嫁”の構図を見抜く冷静さを持ちましょう。