こんにちは、田中です。
このシリーズでは、当ブログに問い合わせのあった不動産投資のお悩み相談の事例を紹介していきます。
今、まさに不動産投資で悩んでおられる方も多いと思います。
- 提案してくれている会社は信用して良いのだろうか
- 提案されている物件は購入して良いのだろうか
- そもそも不動産投資を始めるべき?
- 投資を始めないといけないと頭で分かっていてもなかなか一歩踏み出せない
- 売却しようとしたらサブリース契約が原因で査定額が2割減
- サブリース契約の解除を申し出たが門前払い
など、お悩みの方にとって、有益な情報提供になればと考えています。
それでは、今回の相談事例について紹介していきます。
※相談者に許可を取って執筆しています。相談いただいた情報を無断で掲載はいたしません。
相談者のプロフィール(仮名:高橋 直樹さん)
相談のきっかけと内容
1年で3ヶ月分の家賃振込漏れ
私に相談する1年ほど前から、高橋さんが不動産を購入した不動産会社Aからの家賃振り込みに度々遅延が起きるようになる。
結果的に3ヶ月分の家賃が振込されていない状況。その点について説明を求めたが、簡単な謝罪と月末までに振り込むという口約束。
結果的に月末になっても振込はなく、不動産会社とは連絡が取れない状況。
不動産会社とはサブリース契約を結んでいたため、入居者情報は開示されておらず、どこから手をつけてよいか分からず、途方に暮れている。
田中が感じたこと
賃料とは本来物件オーナーのもの。1度の遅延ですら許してはいけない
賃料とは、本来オーナーのお金です。その振り込みを遅延する時点で、そういった会社は信用できません。
多くの場合、振り込み遅延の理由は不動産会社の資金繰りの悪化です。口頭ではシステムトラブルや銀行側の手違い等と説明されるケースが多いですが、そういう説明を鵜呑みにしてはいけません。
また、例え説明が事実だったとしても振り込み遅延も事実ですから。
今回のケースでは高橋さんから不動産会社に問い合わせて、初めて謝罪と振り込みの約束がありました。(結果的に振り込まれませんでしたが・・)
こういう会社とは一刻も早く距離取る必要があります。
田中が考える解決方法
私から高橋さんに対して、
- 専門の弁護士に依頼して、一刻も早いサブリースの解除
- 入居者情報を取得し、直接契約ないしは別管理会社と契約すること
をお話させていただきました。
今回の解決策の背景について解説していきます。
1.高橋さんに対応方法を伝授
今回のケースは、不動産会社との管理契約を解除し、入居者情報を開示させる。その後、新しい管理会社に管理を委託する流れで進めていくべき、というお話をしました。
本件は、不動産会社とのサブリース契約であったため、相手に落ち度なければ解約は非常に困難です。しかし、家賃の未払い理由にサブリースの解除と入居者通知を請求ができると考えました。
実際に、高橋さんは上記の対応を弁護士に依頼。しかし、不動産会社からは全く音沙汰がありませんでした。
法律的には確実にサブリース契約を解除できる状況でしたが、相手が応じなければ対処できません。関わる不動産会社を間違えると本当に面倒なことに巻き込まれることを改めて痛感しました。
2.新たな問題「二重サブリース」・逆サブ
サブリース契約をしている不動産会社からは連絡がありませんでしたが、なぜか別の不動産会社Bから高橋さんに連絡がありました。
ここで新たな事実が発覚します。
不動産会社Bは不動産会社Aとサブリース契約を結んでいる会社だったのです。いわゆる二重サブリース状態になっていました。
本来であれば、
のはずが、
という間に不動産会社が2社挟まれる形になっていたのです。
不動産会社Aは中古市場で仕入れたサブリース物件に自社のサブリースを乗せて物件オーナーに販売していたと言うこと。
そして、これに加えて衝撃の事実が発覚しました。
なんと、不動産会社Bから不動産会社Aが受け取る家賃よりも、物件オーナーである高橋さんに支払われている家賃の方が高かったのです。これは逆サブリースと呼ばれ、物件価格を釣り上げる悪質な手法です。物件が割高になっていたことは間違いないでしょう。
逆サブリースで物件価格が釣り上がる仕組み
サブリース業者は、本来10万円の家賃の物件を12万円に引き上げて、オーナーとサブリース契約を結びます。サブリース業者は毎月2万円の赤字になりますが、販売時に約400万円の物件価格を上乗せできているため、問題ありません。サブリース契約は概ね2年で家賃改定タイミングとなるので、そこでサブリースの補償額を下げていけば利確できます。
一方、最近は逆サブリースをする不動産会社の倒産が相次いでいます。何らかの形で利益を残す計画倒産の可能性も捨てきれません。
3.不動産会社Aは別のサブリース会社を紹介してくるケースも
実は、高橋さんのケースで問題のあった不動産会社Aは、家賃の振込遅延・振込漏れの相談が当ブログには多く寄せられています。
他のケースでも高橋さんと同様のトラブルを抱えている方は多くいました。その中で、サブリース契約の解除を弁護士から通知すると、不動産会社Aから管理の移管先として別の不動産会社Cを紹介してくるケースもあったようです。
不動産会社Cもサブリース契約が前提になるため、結局二重サブリースの状況は改善しません。
3.二重サブリース→サブリースに変更
高橋さんのケースに話を戻します。
高橋さんに連絡してきた不動産会社Bは、不動産会社Aの資金繰り悪化によるトラブル多発を把握していたため、高橋さんと直接管理契約を結ぶ方向で提案してきました。
高橋さんとしては不動産会社Bとのサブリース契約も解除した上で、集金代行契約による管理を希望していましたが、不動産会社Bには入金漏れ等の落ち度がなく、解約には多額の違約金が必要になることは容易に想像ができました。
そのため、不動産会社Bと高橋さんで契約を巻き直し、本件は着地しました。
結果的に家賃が下がり利回りは落ちてしまいましたが、振込漏れはなくなったため、ローン返済も滞りなくできるようになりました。
4.振り込みがなかった期間の家賃は回収を諦める
不動産会社Aからの振込がなかった家賃は3ヶ月分。法律的には裁判を起こして支払命令を出すことは可能でしたが、弁護士費用や、資金繰りの悪化による回収可能性の低さを考え、泣き寝入りすることとなりました。
しかし今回の件を良い機会と捉え、家計改善に注力。サブスクの動画サービスや携帯プランの見直しなどに取り組み、1年もしないうちに立て直しに成功したようです。
振り返り
今回のようなトラブルは、サブリース契約を積極的に結んでいる不動産会社によくあるトラブルです。2020年ごろから1年に2~3件は起きているように感じます。
サブリース契約は本当に危険な契約ですから、今不動産投資を検討されている方は、必ず結ばないようにしましょう。
一方、すでにサブリース契約を結んでいる場合は、高橋さんのように解約すると家賃が下がるリスクもあります。その場合は、どういった対応がベストかが物件によりケースバイケースですので、お悩みの方はご相談くださいね。
サブリースの怖さについては下記記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
本記事を読まれた皆様へ
今回の相談のケースは、二重サブリース、逆サブ、不動産会社による家賃の横領という三重苦の相談でした。
一度サブリース契約に絡め取られてしまうと無傷で復活はなかなか難しいです。
今回のケースでもやはり物件価格を釣り上げられていたこと、サブリース契約が一社残ってしまったことが悔やまれます。
一方、対応方法がわからず時間をロスしていたら、家賃の未回収期間が続き、ローン返済にも影響してきます。まずは冷静に解決できる点を見極め、適切に対応していくことで、最悪の事態は免れることができました。
もしサブリース契約でお困りの方は、相談いただければ何かしら糸口が見つかるかもしれません。