近年の不動産投資界隈では、「民泊」「高利回り」「インバウンド需要」といった言葉が華やかに踊り、成功者のストーリーが次々に発信されています。そんな流れの中で出版されたのが、曽我ゆみこ氏による『アパートで民泊 40代から始める首都圏超高利回り不動産投資法』です。
一見すると、築古アパートと民泊を組み合わせて“高利回り”を実現する、非常に魅力的な投資手法に見えるかもしれません。しかし、高利回りには必ず理由がありますし、不動産の世界は「数字がよい=実態もよい」とは限りません。
この記事では、まず著者である曽我ゆみこ氏と本書の概要を紹介し、そのうえで 築古アパート×民泊という手法の本質的なリスク を、筆者の個人的な見解として丁寧に解説していきます。
曽我ゆみこ氏とは
曽我ゆみこ氏は、化粧品会社の経営者として活動しながら、不動産投資にも取り組んできた人物です。自身の健康上の問題をきっかけに、「働かなくても収益が生まれる仕組み」の必要性を痛感し、都内近郊の物件を中心に投資を開始したと言われています。
現在では、インカム・キャピタルの両面を狙う投資手法を提唱するコミュニティを運営し、同じ40〜50代の投資志望者に向けた講座やサポート活動も行っています。
本書は、そうした彼女の経験をもとに、“築古アパートを民泊として運用することで高利回りを実現する方法” を体系化したものです。
書籍『アパートで民泊』の簡単な概要

引用:経営者のための金持ち大家さんファミリー
この本のテーマは非常にシンプルで、「築古アパートを賃貸+民泊として運用し、首都圏で高利回りを実現する」というものです。
著者自身の投資経験がベースになっており、どんな物件を選ぶのか、どのように民泊を組み合わせて収益を最大化するのか、融資をどのように使うと効率的なのかなどが、実用的な視点でまとめられています。
特に特徴的なのは、著者が考案した「Wゲインシート」という独自の評価ツールで、保有しても売却しても利益が出る“優良物件の見分け方”を可視化するためのものとされています。
全体としては、40代以降でも今から不動産投資を始められるというメッセージと、築古物件と民泊を組み合わせることで収益を高めていく実践的ノウハウが盛り込まれた構成です。
ここからは個人的な見解です
ここまでの内容は書籍紹介ですが、ここから先は筆者の個人的な意見となります。
結論から言うと、築古アパートと民泊の組み合わせは、数字の上では非常に魅力的に見える一方で、現実には 相当ハイリスクな投資手法 だと感じています。利回りだけを見て突っ込むと、後戻りできない事態になる可能性もあります。
不動産を“利回り”だけで見てしまう危険性
不動産投資の広告や提案では、まず最初に「表面利回り」が提示されます。しかし、この数字は満室運営を前提にした“理想値”であり、現実の運営に必要なコストやリスクはほとんど反映されていません。
築古アパートの利回りが高く見えるのは、それだけ リスクを抱えた物件なので、利回りを高く“見せないと売れない” という事情があるからです。
利回りだけを追うと、肝心の資産性や将来的な修繕・空室リスクを軽視してしまいがちで、本来は避けるべき選択に飛びついてしまうこともあります。
築古アパートの本質的なリスク
築古アパートは、「買った瞬間が最高潮」であることが多く、そこから先は下り坂になるケースが少なくありません。
賃貸需要の面では、築年数が古くなるほど入居者を集めるのが難しくなり、設備が古いと内装・設備更新の負担が増えていきます。築古物件では、給排水管や電気設備の老朽化は避けられず、突発的な修繕で数十万〜数百万単位の支出が必要になることも珍しくありません。
さらに、客付けの際には不動産会社から高額な広告料(AD)を求められるケースもあります。築古物件は入居付けが難しいために、家賃数ヶ月分のADを支払わなければ、不動産会社が引き受けてくれないのです。もちろん、表面利回りにはこうしたコストは一切反映されていないため、実際に運営してみると「利益が全然残らない」なんて実態にも。また、造りがしっかりしている駅近区分マンションなどと違い、築古アパートは入居者の入れ替わりが激しい傾向(経験上半年で退去の繰り返しで疲弊したことも。涙)にあります。もちろんその都度ADが必要になりますからね。。
出口(売却)の観点でも、築古アパートは厳しい現実があります。築年数が進むほど買い手は減り、融資もつきにくく、売却には値下げが必要になる場合が多くなります。場合によっては、残債を下回って売るしかないという状況に追い込まれることさえあります。
こうした構造的なリスクがあるため、築古アパートは資産性よりもキャッシュフローに重心が寄った投資であり、「想定通りに回らなかった時のダメージ」が非常に大きい商品です。
民泊投資が抱える不安定さ
民泊を組み合わせると、利回りの面では跳ね上がります。
しかし、それは同時にリスクも大きく跳ね上がるということです。
そもそも賃貸業とは異なり、短期滞在の観光客がターゲットとなるため、シーズンによる変動が非常に大きくなります。また、ライバルが周辺の賃貸物件から、他の民泊やホテルなどになるため、競合との熾烈な争いに身を投じることになります。
もちろん、築古アパートの場合は立地が特別良いものは少ないですから、観光客から選ばれにくいという現実もあります。内装を整えても、建物の古さという本質的な不利は消せません
そして、民泊は規制の影響を強く受ける業態であり、法律や条例の変更で営業日数や許可条件が変われば、収益モデルが一気に崩れる可能性があります。観光需要も、国内外の情勢によって大きく上下します。観光客が減れば、収益は即座に落ち込みます。

そして何より、民泊の運営は「投資」というよりも「事業」に近い性質があります。問い合わせ対応や清掃、レビュー管理、価格調整など、手間は多く、トラブルも発生しやすい領域です。代行を入れれば利益が削られ、丸投げですべて安心という世界ではありません。
ただでさえ難しい民泊運営を、築古アパートという土台で戦うのはかなりハイリスクな戦略と言わざるを得ません。
築古アパート×民泊は、極めてハイリスクな投資
築古アパートも民泊も、それぞれ単体で十分にリスクの大きい手法です。この両方を掛け合わせれば、当然ながらリスクは倍増します。
高利回りという言葉は非常に魅力的ですが、投資の世界に「安定したまま高利回りが続く投資」は存在しません。リターンを追えば必ずリスクが増えますし、その逆もまた然りです。
人それぞれリスク許容度は異なりますが、本件に関してはかなり慎重な判断が必要なように思います。
成功事例ばかりを信じて突き進むのではなく、自分の資金力・時間・経験に照らして本当に適した手法かどうか、冷静に判断する必要があります。
本業があるサラリーマンは都心の区分マンションがおすすめ
民泊 x 築古アパートの投資スタイルは、一見すると高いキャッシュフローを生み出す魅力的な投資に思えます。しかし、実態はリスクも大きく、特に本業を持つサラリーマンには再現が困難です。ボロ戸建は修繕リスクや長期空室の懸念がつきまとい、新築一棟は多額の借入と空室リスクを抱えます。
そのため、サラリーマン投資家にとって現実的な選択肢は、むしろ「都心の区分マンション」です。駅近の物件であれば入居が途絶える可能性は低く、資産価値も安定しているため売却も容易。本業に支障をきたさず、堅実に資産形成できる手法といえるでしょう。

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