ワンルームマンション投資は、相続税対策としても人気です。
では相続税対策としてワンルームマンションを購入した場合、どれぐらい節税になるのでしょうか?
今回は、現金をそのまま相続した場合と、ワンルームマンションを相続した場合、それぞれの相続税額をシミュレーションします。
最初に、ワンルームマンションの購入で、いかに相続税が安くなるかについて解説していきます。
あわせて、生前贈与を組み合わせた相続税対策についても説明していきますね!
相続税とは
相続税とは、故人の遺産を相続する際に、相続人が国に納める税金のことです。
ここでは相続税の仕組みや、税額の計算方法について説明していきます。
相続税の仕組み
相続税は、相続財産が「基礎控除額」と呼ばれる一定の額を超えた場合に、納める仕組みとなっています。
つまり、全ての相続人に納付の義務があるわけではありません。
相続財産が多い人に税金を納めさせ、社会に還元することで、富を再分配することを目的に作られた制度です。
相続税率と基礎控除
相続税額の計算方法は、以下のとおりです。
- 相続財産の額-基礎控除額=課税価格
- 課税価格×相続税率-控除額=相続税額
遺産が全て現金の場合は、その額がそのまま相続財産の額になります。
基礎控除額は、相続税がかからない財産額の上限です。
こちらは、以下の計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
法定相続人が1人なら基礎控除額は3,600万円、2人なら4,200万円です。
相続財産額が1億円で、相続人が1人の場合、「相続財産額-基礎控除額」の課税価格は、7,400万円になります。
この課税価格に以下の税率を掛け、控除額を引くことで、相続税額を算出できます。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
~1,000万円 | 10% | 0円 |
~3,000万円 | 15% | 50万円 |
~5,000万円 | 20% | 200万円 |
~1億円 | 30% | 700万円 |
~2億円 | 40% | 1,700万円 |
~3億円 | 45% | 2,700万円 |
~6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円~ | 55% | 7,200万円 |
この場合、相続税額は「7,400万円×30%-700万円」で、1,520万円になります。
かなりの金額になりますよね。小ぶりのワンルームなら現金購入できますね。
ワンルームマンションは相続税対策になる
冒頭で説明したとおり、ワンルームマンションは相続税対策にうってつけです。
しかし、なぜワンルームマンションが相続税対策になるのでしょうか?
ここでは、この理由について、不動産投資の評価額の計算方法も交えて説明していきます。
なぜ不動産は相続税対策になるのか
ワンルームマンションに限らず、現金を不動産に変えることで、相続税対策ができます。
先ほども説明したとおり、現金を相続した場合、その額がそのまま相続財産の額になります。
しかし不動産を相続した場合、相続財産の額は購入額ではなく、評価額で決まる仕組みです。
不動産は流動性が低く、換金が難しいことから、評価額は購入額よりグッと安くなっています。
つまり、現金を不動産に変えることで、相続財産の額を小さくでき、相続税の額も安く抑えられるのです。
不動産投資の評価額の計算方法
不動産の評価額は、土地と建物、両方に付けられます。
不動産投資における、それぞれの評価額は、以下の計算式で算出可能です。
- 土地…路線価x面積× (1-借地権割合x借家権割合 x 賃貸割合)
- 建物…固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
土地の評価額は、「路線価」が基準になります。
路線価とは、路線(道路)に面する宅地の1㎡あたりの評価額です。
路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」から確認できます。
地域を選ぶと、以下の路線価図が表示されます。
【路線価図】
画像出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」
路線価は、数字とアルファベットの組み合わせで表されています。
数字は、1㎡あたりの地価です。
例えば、「460」の場合、地価は46万円/㎡になります。
アルファベットは、以下の「借地権割合」を意味しています。
【借地権割合】
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
賃貸マンションやアパートなどの「貸家建付地」の場合、通常の宅地の地価に借地権割合を掛けた値が路線価になります。
例えば「460D」なら、路線価は「46万円×60%」で、27万6,000円です。
ここでもう一度、土地の評価額の計算式を見てみましょう。
路線価×面積×(1-借地権割合x借家権割合 x 賃貸割合)
借地権割合は、先ほどの路線価の割合(Cなら70%、Dなら60%)とイコールです。
「借家権割合」は、ほとんどの地域で30%と規定されています。
「賃貸割合」は、ワンルームマンションの場合は100%です。
次に、建物の評価額は、以下の計算式で求められます。
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
建物の固定資産税評価額は、ワンルームマンションの場合、200~300万円程度です。
これに「1-借家権割合(0.3)×賃貸割合(1)」を掛けることで算出できます。
なぜワンルームマンション投資は相続税対策に向いているか
ワンルームマンションは投資用の不動産のなかでも、相続税対策に向いています。
なぜならワンルームマンションは、土地の所有分が少ないからです。
同じ投資用の不動産でも、アパート一棟の場合、アパートが建っている土地の全てが評価対象になります。
その点 ワンルームマンションなら、100㎡に20戸ある場合は、土地の所有は20分の1の5㎡に収まります。
そのぶん土地の評価額も20分の1になり、相続税額も節約できるのです。
ワンルームマンションで節税シミュレーション
不動産投資の評価額の計算方法が分かったところで、ワンルームマンションを購入することで、どれだけ節税になるのかをシミュレーションしてみましょう。
ここでは、現金1億円をそのまま相続した場合と、ワンルームマンション3件を購入した場合、それぞれの相続税額を算出していきます。
1億円現金相続の場合の相続税額
相続財産が現金1億円で、相続人が3人いる場合の相続税額は、以下のとおりです。
課税価格…「1億円-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円」
相続税額…「5,200万円x0.3-700万円=860万円」
このように、相続税額は860万円になります。
ワンルームマンションを3件購入した場合
次に、現金1億円から以下3件のワンルームマンションを購入した場合を想定して、相続税額を算出していきましょう。
購入価格 | 路線価 | 土地の面積 | 土地に対する 部屋の面積 | |
五反田 | 3,200万円 | 500D | 100㎡ | 1/20 |
川崎 | 2,400万円 | 300D | 100㎡ | 1/36 |
要町 | 3,000万円 | 430C | 100㎡ | 1/25 |
残った現金 | 1,400万円 |
この場合、各物件の土地の評価額は以下のとおりです。
- 五反田(路線価500D)…50万円 x100㎡ x 1/20 x (1-0.6×0.3×1)=205万円
- 川崎(路線価300D)…30万円 x100㎡ x 1/36 x (1-0.6×0.3×1)≒68万円
- 要町(路線価430C)…43万円× 100㎡ x 1/25 x (1-0.7×0.3×1)≒136万円
建物の評価額の算出に使われる固定資産税の評価額は、先ほども説明したとおり、ワンルームマンションなら200~300万円程度です。
250万円と仮定した場合、1件あたりの建物の評価額は「250 x (1-0.3×1)」で175万円になります。
3件の土地と建物の評価額の合計は、以下のとおりです。
土地の評価額 | 建物の評価額 | ワンルームマンションの評価額 | |
五反田 | 205万円 | 175万円 | 380万円 |
川崎 | 68万円 | 175万円 | 243万円 |
要町 | 136万円 | 175万円 | 311万円 |
合計 | 934万円 |
評価額934万円に残った現金1,400万円を足すと、相続財産の額は2,334万円です。
相続人が3人なら、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×3」で、4,800万円です。
この場合、相続財産の額が基礎控除額を下回っているので、相続税はかかりません。
圧縮率はなんと89%!
上記のケースにおいて、現金で相続した場合と、ワンルームマンション3件を購入した場合の相続税額は、それぞれ以下のとおりです。
- 現金で相続…860万円
- ワンルームマンションを3件購入…0円
このように、現金だと860万円かかった相続税が、ワンルームマンションを3件購入することでゼロにできました。
1件あたり、約287万円も節税できた計算になります。
また、ワンルームマンションの評価額と現金の評価額は、それぞれ以下のとおりです。
- マンション評価額…934万円
- 現金評価額…8,600万円
934万円を8,600万円で割ると、約10.8%。
つまり相続財産の評価額を、約89%も圧縮できたことになります。
メリットは他にも!相続税対策にワンルームマンションがオススメな理由
相続税が安くなること以外にも、ワンルームマンションは相続税対策になるメリットがあります。
ここでは、その他のメリットについて説明していきましょう。
複数戸もつことで分割しやすい
相続人が3人いる場合、アパート一棟だと、誰が相続するかで揉めてしまいます。
しかしワンルームマンションであれば、3件購入することで、3人に1件ずつ相続できます。
不動産市場は値上っている!
ワンルームマンションは近年、全国的に値が上っています。
相続から5年ほどで売却すれば、以下の例のように、数百万円の売却益が出ることも期待できます。
【川崎の例】
2007年 | 2009年 | 2013年 | 2017年 | 2020年 |
川崎22㎡1500万 | 川崎22㎡1700万 | 川崎1800万 | 川崎2000万 | 川崎2400万 |
賃貸収入を得られる
投資に回しでもしない限り、現金を相続すれば、あとは減る一方で、増えることはありません。
しかしワンルームマンションを相続すれば、毎月家賃収入が得られます。
つまり、相続人に次々新しいお金をもたらすことができるのです。
また、物価が上がるなどの経済事情があり、借り主が合意すれば、契約更新のタイミングで家賃の額を引き上げることも可能です。
被相続者の保険料を節約できる
ワンルームマンションは物件の価値もさることながら、賃貸収入を得られる貴重な存在です。
そのため収入保証保険のような割高な保険を解約できますし、
一時金が必要な場合でもワンルームマンションを売却することで生命保険の代わりにすることができます。
さらに!生前贈与で税額を最大限圧縮!
相続税の対策には、生前贈与も有効です。
贈与にも税金がかかりますが、年間110万円までなら、贈与税はかかりません。
毎年110万円を贈与することで相続財産の額を減らしていけば、相続税も安くなります。
とはいえ、資産額が数億円あるような場合、毎年110万円ずつ贈与していても、相続財産のトータル額があまり減らないため、相続税の有効な対策にはなりません。
こうした場合に役立つのが、生前に資産をワンルームマンションに変えて贈与する方法です。
現金を贈与するよりも、ワンルームマンションを贈与した方が、贈与税は安くなります。
ここでは贈与税の仕組みや、どれくらいの節税になるかについて説明していきます。
生前贈与でどれくらい節税になる?
贈与税額の計算式は、以下のとおりです。
- 贈与された額-基礎控除額(110万円)=課税価格
- 課税価格×税率-控除額=贈与税額
贈与税の税率には、以下2種類があります。
- 一般税率…尊属(直系の父母や祖父母など)以外からの贈与に適用される税率
- 特例税率…尊属からの贈与に適用される税率
それぞれの税率は、以下のとおりです。
課税価格 | 一般税率 | 特例税率 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
~200万円 | 10% | 0円 | 10% | 0円 |
~300万円 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
~400万円 | 20% | 25万円 | ||
~600万円 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
~1,000万円 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
~1,500万円 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
~3,000万円 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
~4,500万円 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円~ | 55% | 640万円 |
それでは、2,200万円を現金で贈与する場合と、ワンルームマンションで贈与する場合、それぞれの贈与税額をシミュレーションしてみましょう。
ここでは、相続税のシミュレーション時に使った五反田のワンルームマンションを購入した想定で計算していきます。
特例税率でのそれぞれの贈与税額は、以下のとおりです。
【現金2,200万円を贈与】
(2,200万-110万)×45%-265万=675万5,000円
【2,200万円で購入したワンルームマンション(評価額380万円)を贈与】
(380万-110万)×15%-10万=30万5,000円
このように、現金をワンルームマンションに変えることで、贈与税を675.5万円から30.5万円に圧縮できました。
さらに、相続財産の額を2,200万円減らせたことで、相続税の額も安くなります。
生前贈与の注意点
生前贈与には、以下2つの注意点もあります。
- 毎年110万円ずつ贈与すると、贈与税がかかる場合がある
- 死亡から3年以内の贈与は相続になる
贈与額が年間110万円以内なら、基礎控除額の範囲内なので、贈与税はかかりません。
しかし、毎年同じ額を同じ時期に贈与した場合、税務署に「相続税を抑えるための計画的な贈与」と見なされます。
この場合、贈与額の総額から基礎控除額110万円を引いた額が、課税対象になります。
例えば、毎年110万円を10年にわたって贈与していた場合、「(1,100万円-110万円)×30%-90万円」で、207万円もの贈与税がかかってしまうのです。
こちらは、毎年贈与する金額や時期を変えたり、間に贈与しない年を挟んだりすることで対策可能です。
また、被相続人の死亡から3年以内の贈与については、相続税の課税対象になるという点も覚えておきましょう。
物件を見極めることが重要
ここまで説明してきたとおり、ワンルームマンション投資は相続税対策に非常に有効です。
しかし、ワンルームマンションならなんでもいいわけではありません。
たとえ相続税対策でも、相続した物件の価値が下がったり、賃貸がつかなかったりしたら本末転倒です。
賃貸がつきやすく、物件価値の下がりにくいエリアや物件を見極めて、慌てずに購入するようにしましょう。