ワンルームマンションの売却では、状況により税金が発生します。仕組みを把握せずに進めると、想定外の出費や手残りの目減りにつながるため、納税のタイミングと概算額を事前に把握して資金計画に組み込むことが重要です。
本記事では、売却時に関係する4つの税金(譲渡所得税/登録免許税/印紙税/消費税)と、所有期間・売却時期の調整などの基本的な節税の考え方を整理します。
売却を検討している方は、ぜひ参考にして、安心して取引を進められるよう準備しておきましょう。
ワンルームマンション売却にかかる税金1.譲渡所得税

ワンルームマンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。ここではその仕組みと計算方法を解説します。
譲渡所得税とは
譲渡所得税とは、不動産を売却して得た利益に課される税金です。具体的には「売却価格から取得費や売却費用を差し引いた金額」がプラスになった場合に課税されます。
課税対象となるのは次の3つの税金です。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税(2037年12月まで)
一方で、売却によって損失が出た場合(譲渡所得がマイナスのとき)は課税されません。また、給与所得などと合算せずに計算する分離課税方式が採用されています。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は以下の式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額
- 取得費:購入時の代金や登記費用など、物件取得にかかった費用
- 譲渡費用:売却のために支払った仲介手数料や印紙税など
主な内訳は次の通りです。
| 取得費に含まれるもの | 譲渡費用に含まれるもの |
|---|---|
| 土地・建物の購入代金 | 不動産仲介手数料 |
| 建築費・改良費 | 売主が負担した印紙税 |
| 不動産取得税・登記費用 | 立退料・解体費用 |
| 立退料・造成費・測量費 | 売却のための違約金・名義書換料 |
もし取得費がわからない場合は、売却価格の5%を取得費として扱うことが認められています(概算取得費)。
取得費の算出方法
建物の取得費は、購入時の価格から経年による価値の減少分(減価償却)を差し引いて算出します。
一方、土地は経年劣化しないため、減価償却の対象外です。
譲渡税率
譲渡所得に課される税率は、所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点での所有期間に基づき、次のように区分されます。
譲渡税額 = 譲渡所得 × 税率(所得税+住民税)
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 (復興特別所得税含む) |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 約39.63% |
所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で5年を「超えているか」が基準です。わずかに売却時期をずらすだけで長期譲渡(約20.315%)に切り替わることがあり、手残り額に影響します。
ただし、市況や金利、建物状態の変化も加味して税率だけで判断しないことが重要です。

ワンルームマンション売却にかかる税金2. 登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記手続きにかかる税金のことです。不動産売却においては、「抵当権の抹消登記」や「住所・氏名変更登記」を行う際に発生します。
登録免許税とは
登録免許税は、法務局で登記申請を行う際に課される税金です。売却に伴い抵当権抹消登記(ローン完済時)や住所・氏名変更登記が必要になることがあり、税額は不動産1件につき1,000円が目安です。区分所有マンションでは、建物と敷地権で合計2,000円となるのが一般的です。
登記は自分でも申請できますが、通常は司法書士へ依頼します(報酬の相場:1万〜3万円程度)。諸費用は最終決済時の資金計画に含めておくと安心です。
登録免許税の金額
主な登記と税額の目安は以下の通りです。
| 登記の種類 | 税額の目安 |
|---|---|
| 抵当権抹消登記 | 不動産の個数 × 1,000円 |
| 住所・氏名変更登記 | 不動産の個数 × 1,000円 |
ワンルームマンションの場合、建物と土地(敷地権)のそれぞれに課税されるため、1物件につき2,000円程度がかかります。
手続きと注意点
抵当権抹消登記は、売主自身で申請することも可能ですが、通常は司法書士に依頼します。その場合、登録免許税とは別に報酬(5,000〜1万5,000円程度)がかかるのが一般的です。
また、登記手続きは売却完了前に済ませておく必要があるため、スケジュールに余裕をもって準備しておきましょう。
ワンルームマンション売却にかかる税金3. 印紙税

ワンルームマンションを売却するときは、売買契約書に印紙を貼ることで支払う「印紙税」が発生します。契約を正式に結ぶために必要な手続きであり、ほとんどの不動産取引で課税される税金です。
印紙税とは
印紙税とは、契約書などの「課税文書」を作成したときに課される税金です。ワンルームマンションの売却では、売主と買主の間で交わす「不動産売買契約書」がこれにあたります。契約書1通ごとに収入印紙を貼り、印紙税を納める仕組みです。
主な課税文書には、次のようなものがあります。
- 不動産譲渡契約書
- 消費貸借契約書(ローン契約など)
- 請負契約書(建築やリフォーム工事など)
- 手形・受取書・預貯金通帳 など
契約金額が1万円以下の場合は非課税ですが、不動産の売買契約で契約金額が1万円を下回ることはほとんどないため、ワンルームマンションの売買契約は通常、課税対象となります。
印紙税の金額
不動産売買契約書にかかる印紙税は、契約金額によって税額が決まります。2027年3月31日までは軽減税率が適用されるため、以下の表を参考にしてください。
| 記載金額(契約価格) | 通常税率 | 軽減税率 (2027年3月31日まで) |
|---|---|---|
| 1万円超〜10万円以下 | 200円 | ― |
| 10万円超〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
| 100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
| 5億円超〜10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
| 10億円超〜50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
| 50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
ワンルームマンション売却にかかる税金4. 消費税

ワンルームマンションを売却する際、建物部分の売却代金に対して消費税が課される場合があります。ただし、すべてのケースで課税されるわけではなく、「誰が売るか」「どのような目的で所有していたか」によって課税の有無が異なります。
消費税の課税対象とは
消費税は、次のような取引に対して課されます。
- 国内で事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡・貸付・役務の提供
- 海外からの輸入取引
つまり、不動産の売却であっても、事業者が事業として行う場合は課税対象になります。一方、個人が自宅や投資用マンションを一度だけ売却する場合などは、「事業としての継続性・反復性」がないため非課税となるのが一般的です。
課税対象となるケース
ワンルームマンションの売却で消費税が発生する主なケースは、以下の通りです。
- 不動産会社や法人など、課税事業者として継続的に不動産取引を行っている場合
- 投資用物件を多数保有し、事業的規模で売買を行っている個人事業者の場合
なお、消費税が課されるのは建物部分のみで、土地は非課税です。
免税事業者の扱い
課税事業者に該当しない場合(=免税事業者)は、消費税の納税義務がありません。次の条件に当てはまる場合は免税事業者として扱われます。
- 前々年(または前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下
- 特定期間(前年の1月1日〜6月30日)の課税売上高が1,000万円以下
ただし、「適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)」として登録している場合は、免税ではなく課税事業者扱いとなる点に注意が必要です。
一般的に、個人が所有するワンルームマンションを1件売却する場合、消費税は課されないケースがほとんどです。一方で、法人や不動産事業者として継続的に取引している場合には課税対象となるため、どちらに該当するかを事前に確認しておきましょう。
ワンルームマンション売却時の節税1|3,000万円控除の仕組み

ワンルームマンション売却時の節税2|損益通算の仕組み

ワンルームマンションの売却で損失が出た場合でも、一定の条件を満たせば税負担を軽減できる制度があります。ここでは、節税対策として活用できる「損益通算」の仕組みと注意点を解説します。
損益通算とは
損益通算は、1年内の利益と損失を相殺する仕組みですが、不動産の譲渡所得は原則「分離課税」で、投資用ワンルームの売却損は給与・事業・不動産所得など他の所得と通算できません。
例外的に、居住用財産の譲渡損については特例により他の所得と通算・繰越控除が認められる場合がありますが、投資用は対象外です。
投資用で赤字が出た場合は、同一年内の他の譲渡所得(株式等は別枠)との通算の可否や、翌年以降の繰越の可否を税理士に確認してください。
ワンルームマンション売却時の節税3|所有期間・売却タイミングを調整する

ワンルームマンションを売却する際は、所有期間によって税率が変わる点を押さえておきましょう。譲渡所得税は、所有期間が「5年以下」か「5年超」かで税率が大きく異なります。
所有期間による税率の違い
不動産を売却した際の譲渡所得税は、以下のように所有期間によって税率が変わります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 39.63%(復興特別所得税含む) |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 20.315%(復興特別所得税含む) |
所有期間5年以下と5年超では、譲渡所得税の税率が約2倍と大きく異なります。この税率は段階的に上がるのではなく、「5年」という節目で一気に変わるため、5年を経過しているかどうかが節税できるかの分かれ目となります。
そのため、売却予定のワンルームマンションが所有期間5年未満の場合、売却のタイミングをわずかに遅らせるだけで、手残りが数十万円変わることも珍しくありません。
節税のポイント
- 売却年の 1月1日時点 で所有期間が5年を超えているかどうかが基準
- 5年目に差しかかっている場合は、翌年の1月1日以降 に売却することで長期譲渡所得扱いになる
- 売却を急がない場合は、所有期間と税率を確認してからスケジュールを決める
所有期間の確認と売却時期の調整は、シンプルながら効果的な節税方法です。タイミングを誤らなければ、同じ価格で売っても手元に残る金額を大きく増やせる可能性があります。
ただし、最終的な売却価格は市場動向や資産価値によるため、税率だけで判断せず、総合的に判断することが大切です。
売却タイミングによる違いの詳細については、こちらの記事もあわせて参考にしてください。
ワンルームマンション売却にかかる税金のまとめ

本記事では、ワンルームマンション売却にかかる4つの税金と、代表的な節税対策について解説しました。
ワンルームマンションを売却する際には、譲渡所得税・登録免許税・印紙税・消費税など、さまざまな税金が発生します。税金の仕組みを理解せずに進めてしまうと、想定外の出費で手残りが大幅に減ることもあります。そのため、事前にどの税金が発生するのか、どの特例や控除が利用できるのかを把握しておくことが重要です。
本記事で扱った所有期間の調整などは、シンプルながら効果的な方法です。個別の適用可否は状況により異なるため、具体的な売却時期が近い場合は税理士に早めに相談しておくと安心です。本記事で紹介した内容を参考にしさらなる工夫で、税金面からも賢く売却を進めましょう。
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