「海外不動産を減価償却したら節税効果を狙えるっていうけど、どんな節税スキームなのか詳しく知りたい」
かつて、海外不動産を利用した減価償却を活用し、特に年収の高いサラリーマンに対して節税効果を狙った投資手法が普及していました。
この手法は、海外不動産を購入し、その減価償却費を国内の所得から控除することで、所得税や住民税の負担を軽減するというものでした。しかし、2020年度の税制改正により、このスキームが大きく変わりました。
本記事では、海外不動産投資が節税スキームとして機能していた仕組みを解説するとともに、海外不動産減価償却による節税スキームの現状と、おすすめの代替手段まで紹介します。不動産投資による節税に興味のある方は、ぜひご覧ください。
なぜ海外不動産投資が節税スキームとして機能していたのか?
海外不動産投資が節税スキームとして機能していた理由は、主に下記3つです。
- 損益通算で所得を抑えられる
- 簡便法により減価償却できた
- 海外不動産の高い建物比率
それぞれ詳しく見ていきましょう。
損益通算で所得を抑えられる
これは海外不動産投資に限った話ではなく、不動産投資における基本の節税スキームとして、損益通算により所得を抑えられるというのがあります。
損益通算とは、同一年の利益と損失を相殺できる仕組みをいい、以下4つの所得が赤字になった場合におこなえます。
損益通算できる所得 | 詳細 |
不動産所得 | 土地、建物、駐車場などの不動産の貸付による所得 |
事業所得 | 農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業などの事業を営んで得る所得 |
譲渡所得 | 土地、建物、株式などの資産を譲渡して得られる所得 |
山林所得 | 山林の伐採や立木のまま譲渡によって得た所得 |
たとえば会社員として勤めながら不動産投資をおこなっている場合、不動産所得が赤字のときは以下のように損益通算が可能です。
- 会社員の所得:3,000万円
- 不動産投資所得:-2,000万円
- 損益通算した所得:3,000万円-2,000万円 = 1,000万円
会社員としての所得3,000万円から不動産所得の赤字2,000万円を差し引くことで、課税所得を1,000万円に圧縮でき、課税所得が小さくなることで節税効果を得られるという仕組みです。
簡便法で減価償却できた
節税スキームとして考えた場合、不動産投資における損失のメインは減価償却費です。減価償却とは、不動産など価格の大きい資産を取得した場合に、その資産ごとに定められた法定耐用年数で、経費計上していくことを言います。
日本の不動産の法定耐用年数は以下のとおりに定められています。
- 木造:22年
- 鉄骨造:27年
- 鉄筋コンクリート:47年
たとえば木造不動産を2,200万円で購入した場合、22年で分割して、法定耐用年数まで毎年100万円ずつ経費に計上することになります。(計算を単純にするため、ここではすべて建物の値段としています)
さらにこのとき、中古の建物を取得した場合は、規定された法定耐用年数をそのまま使用するのではなく、以下の1もしくは2の計算式を用いて算出します。これを簡便法といいます。
簡便法による中古住宅の法定耐用年数の計算式
1. 法定耐用年数をすべて経過している場合:法定耐用年数×0.2
2. 法定耐用年数を一部経過している場合:(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2
※算出した年数に1年未満の端数があるときの端数は切り捨て。ただし、その年数が2年に満たない場合には2年とする。
仮に木造の築25年の住宅を取得した場合、法定耐用年数を過ぎているので、上記1の式を用いて以下のように計算します。
- 法定耐用年数×0.2=22年×0.2=4.4
端数は切り捨てるので、この場合は4年で減価償却ができることになります。建物が1000万円の物件なら、1年あたり250万円の減価償却ができる計算です。
これが簡便法による減価償却なのですが、国内で法定耐用年数を経過した物件は、投資的に買う価値のない物件も少なくありません。それに対し、例えばアメリカでは中古物件が不動産市場の大半を占めており、法定耐用年数を過ぎていながら十分に投資価値のある物件が豊富です。そうした物件であっても、日本の法定耐用年数を適用した簡便法により減価償却が可能だったのです。
中古の海外不動産を日本の法定耐用年数に当てはめると、このように短い期間で減価償却しやすくなり、より高い節税効果を見込めたのです。
海外不動産市場では建物比率が高いケースが多い
減価償却では、建物や設備部分のみを計上し、土地には適用されません。土地は劣化しないと考えるためです。そのため土地より建物の評価が高いほうが、節税に効果的です。
日本の不動産は建物より土地の評価のほうが高く、土地:建物は8:2といわれていますが、アメリカはその逆です。
- 日本の土地建物比率 土地:建物=8:2
- アメリカの土地建物比率 土地:建物=2:8
アメリカをはじめとする海外不動産のほうが建物の評価比率が高いため、より大きな減価償却費を適用できます。先ほどの例でいくと、1000万円で取得した不動産のうち、日本では建物の割合が200万円になりますが、アメリカなら800万円になるわけです。
それゆえ、建物比率が高く、かつ価値を維持しやすい海外不動産への投資は節税スキームとして機能していたわけです。
2020年度の税制改正で個人による海外不動産の減価償却は不可能に
海外不動産による節税スキームについて解説してきましたが、2020年度の税制改正で個人による海外不動産の減価償却は不可能になりました。
税制改正の背景としては、日本の富裕層による節税目的の海外不動産投資が問題視されたことが挙げられます。
総務省によって提示された「令和2年度税制改正の大綱」には、個人が海外不動産で所得を得る場合、減価償却していた中古物件の赤字所得を令和3年以降は損益通算できないことが記載されました。
節税スキームにメスが入った結果、個人による海外不動産の減価償却は認められず節税効果を期待できなくなり、現在は法人のみしかできません。
法人による海外不動産の減価償却は可能だが、税金の繰り延べ効果に留まる
2020年度の税制改正で規制されたのは、個人による海外不動産の減価償却費を用いた節税スキームのみで、法人による海外不動産の減価償却による節税は今なお可能です。
しかし、こちらも実際には節税というより、税金の繰り延べ効果しか得られない可能性が高いです。なぜなら減価償却により一時的に税負担が軽減されても、物件の売却時にはそのぶん大幅な譲渡益が発生する可能性が高まり、売却のタイミングで再度大きな税負担を受けるリスクが存在するためです。
減価償却によって税金を繰り越し、手元に今すぐ使える資金を残すことで事業拡張を図れるといったメリットを期待できるのは確かです。しかし、よほど事業が計画通りに進行し、十分な利益を確保できなければ、これらのメリットを十分に享受することは難しく、海外不動産投資はリスクのほうが大きいです。海外不動産投資には為替の値動きで収益が変動する為替リスクがあり、税制の違いによる手間も増えます。
さらには海外に不動産があることから、自主管理が難しい点も課題です。現地の不動産会社へ物件の管理を依頼することとなりますが、日本のような細やかな配慮を期待できないケースも少なくありません。
雑な管理によって家賃収入の低下や、多額の修繕費用がかかるといった事案が発生する可能性を視野に入れておく必要があります。
トラブルが発生した際、すぐに現地へ駆けつけることも難しいでしょう。海外不動産投資には多くのリスクがあり、そう期待通りには進まないというのが現実であると理解しておく必要があります。
結局、個人も法人も低リスクの国内不動産投資がおすすめ
節税スキームが機能しなくなった個人による海外不動産投資はもちろん、法人でも、海外不動産投資はおすすめできません。
結局のところ、不動産投資をするなら国内のほうがさまざまな面でメリットが大きく、リスクも抑えられます。
そもそも節税目的ではなく、資産価値のある不動産を購入した結果、節税もできた、というのが正しい姿です。節税節税と鼻息荒くなっていると、本質を見失ってしまいます。
海外不動産投資に比べあらゆる面でリスクが少ない
国内不動産投資は以下のように、海外不動産投資と比較してあらゆる面で低リスクです。
- 投資の先例が容易に見つかる
- 投資環境が安定している
- 為替リスクがない
まず国内不動産投資は海外不動産投資と違い、多くの先例があります。
さまざまなところから、失敗談を含む数々の情報を入手できるので、検討している不動産の今後の需要や投資の適正さなどを判断しやすいです。自分で投資判断する場合だけでなく、実践者が多いので意見を求めやすく、このメリットは案外馬鹿にできません。
また日本は政治的・経済的、そして社会的にも投資環境が安定している、カントリーリスクがもっとも低い国のひとつでもあります。(出典:日本貿易保険「国・地域ごとの引受方針」)
投資先の国によってはテロや急な政権交代といった不安定な情勢により、不動産が破壊されたり価値が下落したりして不利益を被る可能性があります。しかし、日本ならこのような心配はほとんどありません。
国内不動産なら為替の値動きも関係ないので、海外不動産投資で生じる為替リスクがなく、安定した収入を得やすいことも国内不動産投資をおすすめする理由のひとつです。
ローン活用によるレバレッジを効かせた資産形成ができる
国内不動産投資では、ローンを活用することで、少額の自己資金で不動産の購入が可能となり、レバレッジを効かせた資産形成ができます。
一方、海外不動産は金融機関から融資を受けること自体難しく、自己資金による購入が一般的。レバレッジ効果は期待できませんし、そもそも一般的なサラリーマン投資家にはハードルが高すぎます。
海外の金融機関から融資を受ける方法もありますが、現地の言語が流暢に話せ、なおかつ交渉力がなければやはり気軽に利用するのは難しいでしょう。
国内不動産投資だからこそ安心してローンが活用でき、少額の自己資金でレバレッジ効果を狙った資産形成が可能となるのです。
海外不動産投資の減価償却による節税スキームのまとめ
本記事では海外不動産を減価償却することによる節税スキームについて解説しました。
以前は海外不動産を減価償却して所得を抑え、節税効果を狙う手法がとられていましたが、2020年度の税制改正により、個人ではできなくなりました。法人では現在も可能な手法ですが、得られるメリットに対しリスクがわりにあっておらず、おすすめできる方法ではありません。
それに対し、国内不動産投資は為替リスクや、投資環境の安定性・先例の多さなどを考慮すると低リスクで、なおかつローン活用によるレバレッジを効かせた資産形成も可能です。メリットのほぼない海外不動産投資ではなく、国内不動産投資を選択して着実に資金を増やしましょう。
しかしながら、どこの会社で物件を購入しても利益が出るというわけではありません。不動産投資は複数の情報網を使って物件購入の判断材料を集めた方が、成功の確率が上がります。
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